2つの世界で生きるアンドレルトン・シモンズ



<エンジェルス選手紹介>
アンドレルトン・シモンズ

メジャーリーグ1の守備の名手と呼び声高いショートのシモンズ。過去5年のDRS(Defensive Runs Saved)+131はダントツのトップ。

この期間の2位がブランドン・クロフォードの+62であることを知ると、この数値の凄まじさがよくわかります。2013年〜2016年の4年連続でフィールディング・バイブル賞に選ばれています。

今年は打撃でも目覚ましい進歩を見せ、打率.301/OPS.801。2017年7月現在のWARは5.32でメジャー4位。(トップ3はアルトゥーベ、シャーザー、ジャッジ。)コンタクトバッターで三振が少ない&早打ちであるのが特徴ですが、ここまで出塁率は.352OBPとキャリアハイ。14盗塁も決めています。

生まれはベネズエラの北約60kmのカリブ海に浮かぶ、旧オランダ領キュラソー島。実はこの島、人口におけるメジャーリーガーの割合がとても高くなっていることで注目されています。

人口15万人のとても小さな島ですが、2000年代で12人、現役だけでも7人のメジャーリーガーを排出しています。アメリカ合衆国では約50万人に一人がメジャーリーガーになるのに対し、単純計算だと今、キュラソー島では約2万人に1人がメジャーリーガーになっていることになります。

シモンズ自身は同郷の先輩であり日本でもプレーした経験のあるアンドリュー・ジョーンズに憧れて野球を始め、ユースチームではケンリー・ジャンセン(現LAD)やディディ・グレゴリウス(現NYY)とチームメイトであったというから、その世界の狭さは伊達ではないかも。

若い頃はメジャーリーガーになるなど思っていなかったようですが、子供の頃からの2人の友達がメジャーのトライアウトを受けに行き、そこでスカウトにシモンズのことを話したのがきっかけでマークされ始めました。

シモンズいわく「あるメジャーのスカウトが僕を見にきたんだ。彼のチームがピッチャーとショートを欲しがっていたから。スカウトは僕のことを聞いたことがあったらしくて、プレーを2イニングくらい見てた。(スカウトの中では)何か「こいつだ」って確信させるものがあったのかもしれない。素直にいうと、彼は多くのプレーを見たわけじゃないんだ。2イニングでヒット1本打って、打球も2回くらい処理した。ゴロとフライを1回ずつ。そして”君はまだ少し改善することがある”って言った。それが全ての始まりだよ。」

ウェスタンオクラホマ州立大学時代は、投手として最速98マイル(時速157.7km/h)を計測しました。これはシモンズの守備のハイライトの目玉となっている”超”強肩の理由。どの体勢からでも正確に大砲のような4シーム送球ができ、特に類稀な身体能力・反応速度と合わせた三遊間の守備はしばしば”Unbelievable”と表現されます。

2010年のMLBドラフト2巡目(全体70位)でアトランタ・ブレーブスに遊撃手として指名され、プロ入り。2014年2月20日にブレーブスと総額5800万ドルの7年契約に合意しましたが、2015年オフにはエンジェルスのトッププロスペクト、ショーン・ニューカム、クリストファー・エリス、そしてベテランのエリック・アイバーとのトレードで文字通りショートの後釜として移籍。

WBCに出場することでMLBの調整が狂うという理由で出場を辞退する選手もいますが、シモンズは「WBCに出た方が調子もいいし、祖国代表でプレーしたい」と招集があった13年と17年の過去2回とも出場し、13年はチームの準決勝進出にも貢献。この言葉に違えず13年はキャリアハイの17HRにDRSがシーズン史上最高値の+41、今年もここまで初のOPS.800台にDefensive WARがメジャートップの2.38。

順風満帆のキャリアを送っているようにしか見えないシモンズですが、キュラソーからアメリカの大学に移ったときには文化の違いで苦労したと言います。

メジャー(ひいてはアメリカ)ではフィールドでとても静かで、ピースフルなのに対し、キュラソーの野球はとにかく明るく声を掛け合い、賑やかな雰囲気でした。

「環境が違うし、大学1年目はとにかくきつかった。半年間はプレーせず、私生活もいつも一人。故郷がとても遠く感じたよ。そのうちオクラホマでプレーし始めて、ラテン系、特にドミニカの友達ができたのは嬉しかった。一緒に遊んだり、そこに居場所があるんだと思えたよ。」

「あと食生活もやばかった。僕は時間があれば自分で料理を作るのが好きなんだけど、そんな余裕もないときはいつもマクドナルドだよ。チーズバーガーばかり食べてた。」

「2つの文化の中で生きようとチャレンジしているんだ。僕の妻はメキシカンだけど、ここ(アメリカ)で生まれたし、アメリカ人としての習慣や文化がある。僕にキュラソーの習慣があるようにね。だから、両方の世界で生きてるようなものなんだ。」

自分が稼いだお金は全て奥さんに管理されてるらしいですが、同時にキュラソーの家族を支援したり、野球環境改善にも貢献しています。故郷のbaseball awareness programsに育てられた部分が大きかったとし、今の若い選手がさらにサポートを受け、プロスポーツへの門戸が開かれていくための出資を行なっています。

カルロス・コレアやフランシスコ・リンドーアなど、ショートというタフなポジションでも打てる打者に注目が集まりやすい傾向は同じで、通算OPS.691のシモンズが今までオールスターに一度も出場したことがないのも一理あります。

脂が乗ってくる27歳のシモンズが成長を遂げ、後半戦に打率を3割に乗せた瞬間、これから彼がトラウトとともにオールスターの常連になることを確信したMLBファンは私だけではないはず。
ヘンスリー・ミューレンスやアンドリュー・ジョーンズと並んで、シモンズがキュラソー島の希望の星として2つの世界でこれからも活躍していくことを願っています。

参照:
アンドレルトン・シモンズwiki
Angels’ Andrelton Simmons is living in ‘both worlds’
ESPN WAR Leader
Major League Baseball Players Born in Curacao

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メジャーリーグLAA情報をまとめます。今年は大谷翔平、コザート、キンズラーも加入しポストシーズンへ行けるか。スポナビにて同ブログを運営していましたが閉鎖のため引っ越しました。仕事で海外出張が多いので更新頻度はまちまちですがよろしくです。好きな選手はWeaver(引退),Trout,Richards,Simmons,Calhoun